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2004.12.28

希望格差社会

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希望格差社会 「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
山田昌弘 筑摩書房 \1,900

「パラサイト・シングル」という言葉を生み出した大学教授の著書。学術書ではないのでしょうが、仮説、検証、引用等がきちんとしているため、安心して読めます。そしてそれ故に説得力があるため、問題の深刻さが浮き彫りになってきます。

目次:
1.不安定化する社会の中で
2.リスク化する日本社会 現代のリスクの特徴
3.二極化する日本社会 引き裂かれる社会
4.戦後安定社会の構造 安心社会の形成と条件
5.職業の不安定化 ニューエコノミーのもたらすもの
6.家族の不安定化 ライフコースが予測不可能となる
7.教育の不安定化 パイプラインの機能不全
8.希望の喪失 リスクからの逃走
9.いま何ができるのか、すべきなのか

(引用)・・・日本社会は、リスク化、二極化のうねりの中にいる。そして、1990年ごろまで存在していた「安心社会」の基盤が崩れつつある。
 ニューエコノミーの進展により、職業は不安定なものとなり、新しい経済システムに適応できる能力のある人と、落ちこぼれてフリーター化する人の格差が広がっている。相対的に安定していた家族もリスクを伴ったものとなり、安心して依存できるものではなくなっている。学校教育のパイプライン・システムに漏れが生じ、「努力して学校に行きさせすれば、一定の職につける」という期待が急速に失われている。
 社会、とりわけ、職業、家族、教育システムが不安定化することは、つまりは、われわれの生活が不安定化して、将来設計図が描けなくなるということである。たとえ、描いたとしても、実現する確率が低くなっている。不安定化する社会に直面して、努力しても仕方がないという希望を失う若者は、あるものは引きこもり、あるものは享楽的消費やアディクションにふけり、あるものはやけになって問題行動を引き起こす。リスクから逃げ出す若者が増え、パラサイト・シングルやフリーターの将来の不良債権化が見込まれ、将来、日本社会の存立基盤を徐々に蝕んでいくことになる。
・・・有史以来、平凡な才能の持ち主にとっては、自由な選択は「嫌悪すべきもの」であったのである。
 ニューエコノミーが進行しているアメリカでは、平均以下の才能を持つものの生活水準は低下している。例えば、大学院卒の平均賃金は上昇しているが、大卒で横ばい、高卒以下だと明らかに低下しているという。
・・・相対的に豊かな社会では、人間はパンのみで生きているわけではない。希望でもって生きているのである。
・・・ニューエコノミーが平凡な能力の持ち主から奪っているのは、「希望」なのである。

 なんでもかんでも「自己責任」という便利な言葉で片付けてしまっては、「社会的」な解決なんてできやしない。滅多に地震が来ない津波警報システムもないリゾートに行った人たちまで、自己責任とか言われそうな国ですから。一方で、旧体制へ逆行する諸々の目論みは、歴史が数多の時代で証しているように徒労に終わるのでしょうね。
 
 資源のある国々(アメリカやオーストラリアとか)や確固たる歴史的なインフラのある欧州諸国なら、希望格差社会でも、いなしながら、受け流しながら生きていくことも日本よりはたやすいのかもしれませんが、著者も書いておられるとおり、「加工貿易立国」の日本にあっては輸出産業の衰退はそのまま国家の衰亡に連なってしまいます。天然資源の無いわが国は、まさに「人間」だけが資源であり、戦略的な資源としての人間を育んできたのが極めて巧妙にそして精緻に組み上げられた「教育体系」であり、「教育システム」であったのだと思います。この基盤は、程度の差はあれ戦前からずうっと継続されてきたものであり、物心ともに日本の豊かさを下支えしてきた最重要成功要因(CSF)であると思います。この「教育システム」に漏れ、綻びが生じていることが判っていても、その結果が誰の目にも明らかになり、政治、行政が言い訳できない状況になる10年くらい先でないと、世の中は動き出さないのでしょうか。そのときは既に手遅れなんでしょうね。結局、小手先ではあれ、個人的に対処していくしか庶民に残された方策はないんでしょうね。
 もっとも、中国はじめ社会主義国家の人たちは、十年単位ほどで生活の基盤がごろんごろんと変わっていく中にあって、逞しく生き抜いておられるわけでしょうから、われわれ日本人も「自分でよく考えて決断し行動に移す」姿勢、習慣を身につけなきゃならんのでしょうね。
 また、著者の組立は理路整然としていてとても説得力があるのですが、「サラリーマン」社会を前提にしている点にこそ限界があるようにも思えます。百歩譲ってサラリーマン社会を前提とするとしても、パイプライン(小・中・高・大・院と進む教育課程の仕組)の漏れに対応できる循環型パイプラインなど、緩やかではあっても敗者復活可能型の社会にはなってほしいですよね。私の周囲では雇用の流動化は結構進んでいるのですが、流出化とも言える所が悩みでもあります。

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