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2005.06.19

半島を出よ(上)

434400759x 半島を出よ(上) 村上龍 幻冬舎 ¥1,890

村上龍の最新作にして、渾身の一撃。幻冬舎のいつものように書き下ろし。上下巻ともに400ページ以上の大作。ローレライほどでないにしても、読みきるには時間がかかりそう。・・・と思ったけれど、昼過ぎに買いに行って、夕方には上巻を読み終えてしまった。それぐらい読みやすいというかスピード感がある。

(アマゾンより)北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。〈財政破綻し、国際的孤立を深める近未来の日本に起こった奇蹟〉

「13歳のハローワーク」は小説ではないもの少年少女に焦点が当てられていたし、文藝春秋に連載されていた「希望の国のエクソダス」の主人公も少年たち。村上龍は、オトナにはまるで期待していないのかもしれない。「五分後の世界」、「ヒュウガウイルス」の設定に共感しつつも、ディテールの描きこみが少なく、ページ数もそう多くなかったことから少々食い足りない思いがしたのも10年くらい前になるのか。

 「五分後の世界」、「ヒュウガウイルス」では明らかにナショナリストとしてのスタンスを打ち出していたと思われる著者が、「希望の国のエクソダス」あたりから、いっぺん全部ぶっ壊さないと再生しない、との想いを強くしたのか。

すでに中田英寿も読了したそうだが(いつ読むねん?飛行機の中かいな。)、エグイ拷問シーンや北朝鮮兵士や少年たちによる躊躇ない殺戮シーンなど人によっては読みづらい部分も多く出てくる。そして、そんなカットを無意識のうちに丁寧に読んでいる自分に気づき、ハッとする。動悸が昂まっている。

兵器の描写や北朝鮮関係者のディテールにも踏み込んでいるが、こういった箇所ではどうしても福井晴敏作品と比較してしまう。けれど、そういった箇所の厚みではどうしたって福井作品に軍配が上がってしまう。おまけに心理描写や駆け引きの多重性、深読みさ加減も福井作品の方が勝っている気がする。しかしながら、この作品が福井氏の3部作とは違う意味での魅力があるのは何故だろうか。無血での福岡占領に、一見すわりの悪い印象があるものの、よく考えると日本政府のありそうな対処の仕方が奇妙な説得力があるからだろうか。それ以上に、村上作品では群像がうまく描かれていることによる「うねり」が迫力を生んでいるように感じる。やたらに登場人物が多く、まともに覚えられるものではないけれど、それでも消化不良な印象はなくすっきりしている。

小説家は小説で語る、とは当たり前のことだから、「この作品で村上龍はなにを言いたかったのか、メッセージは何なのか。」なんてことは愚問だけれど、それでも、「そのココロは。」と問うてみたくなる。

  • 5年後の財政破綻という破滅的なテーマを抱えているにもかかわらず、安穏としている「平和ぼけニッポン」に対する憤りか。
  • 少年少女への期待か。
  • 北朝鮮の指導者層に対する怒りか。
  • 国際情勢、国際感覚に鈍感、無関心な国民に対する呼びかけなのか。
  • 「住民基本台帳ネットワーク」など情報インフラの脆弱性に関する警鐘か。
  • 「戦争」を身近に感じさせるしかけ、としての意図か。
  • それらをひっくるめたエンターテインメントの提示なのか。

 そして、そんな邪推を全て超えたところに解答があってほしいと感じてしまうのでした。

目下、下巻、100ページ通過です。

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