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2006.02.26

他人を見下す若者たち

m03085632011 他人を見下す若者たち 速水敏彦 ¥756 講談社現代新書

ニート、フリーター、下流社会といった流行のフレーズの流れに沿った本かと思って買ったのですが、全く逆向きベクトルでした。読んでても、納得できないというか、共感しづらいというか、???の箇所が多かった。「他人を見下す」=「中の上意識」を持つ若者が多いとの持論を展開しておられる。自尊感情、仮想的有能感、自己愛的有能感といったわかりやすい概念を持ち出してこられるので、なるほどと思わせるところも多いのだけれど、だからといって社会的な課題を捉えきれるものではなく、個人的な感想、印象といった範疇を出ない。

著者の人となりを存じ上げないだけに、切って捨てるような言い方はしたくないんですが、一昔前の教師にありがちな「世間知らず」的な感覚をまざまざと見せつけられる箇所が多く少々唖然としました。

例その1:「親の問題行動その1」:入学後初めての中学1年の保護者会で、ある保護者が「・・・合格が決まってすぐ、春休みから○○塾に行かせていて、勉強は親の方でしっかり面倒を見ています。・・・」と発言。これは学校の授業にまったく期待していない親の姿が窺われ、学校の授業では学習指導は十分でないことが当然と考えており、学校や先生をバカにしているケースと言える。   ・・・とあった。でも、これが子を持つ親としての現実でしょう。バカにされる程度に国際的な基礎学力が低下しており、東大、京大からFランク(フリー。受ければ通る。)の大学まで授業が成立しないケースが増えて大学教授が懊悩している現実に対する責任感が微塵も感じられない。「バカにしている。」なんていう無意味なプライドだけが空しく浮き上がっている。

例その2:「親の問題行動その3」家族旅行で学校を欠席 私事的な都合で勝手に学校を休ませる親が増えている、それも当たり前のように。例えば、7月19日で学校が終わり、20日から夏休みだとする。「家族旅行に行くので、19日から休ませて頂きます。夏休み前の19日までだと航空運賃(旅行代金)がグンと安いので、思い切って学校は休ませてもらいます」という電話がよくある。1学期最後の19日に通知表やその他の配布物を配ることが多いのだが、「何かもらうものがあれば、郵送してくれませんか。」と平気で要求する。これは学校の制度よりも明らかに家族の都合を優先させたものと言える。学校や先生を、公共サービスの一環としてしか認識していないのかもしれない。  ・・・とあった。まず、このような認識は公共サービスとして最低(最低限ではない。)の水準であると言える。なぜなら、利用者としての視点が全く欠如したまさに保護者や児童を「見下した」視点である。恐らくは海外と思われる家族旅行以上に、子供の情操教育に価値がある終業式を挙行しているとでも言うのだろうか。どれほどの付加価値の高い終業式なのか。少なくとも7月19日と20日の航空運賃の差額以上の付加価値がある終業式なのだろう。子供の教育は最終的に親が責任を取るのは当然である。いかに義務教育とはいえ、その親の判断に制度を振りかざす権威主義的な態度、まさに「見下し」である。配布物の郵送に関しては、恐らくは夫婦ともに有職者なのであろうと想像される。学校がコンビニなみに24時間開いているなら、この保護者とて郵送してくれとは言わないであろう。そもそも公共サービスとしての自覚があるなら、保護者から求められる前に配布物を郵送する段取りくらいつけておいて当然の時代である。また、「・・・という電話がよくある。」といった現状認識をしているのなら、なぜ7月19日から夏休みにするようカリキュラムを変更しないのか。まったく受益者の視点を欠いている。著者と同様の表現を借りれば、「学校や先生は、受益者のことを考えなくてもよく、学習効果を働かせる必要が全く無い存在と認識しているのかもしれない。」そもそもこういったテーマを捉えて、学校と保護者が真剣に討議する場すら設けていないのかもしれない。この本の中では、行政と住民のパートナーシップを連想させる箇所は見出せなかったし。

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» 「他人を見下す若者たち」速水 俊彦/著 [スチャラカランナーの日々]
 「他人を見下す若者たち」速水 俊彦/著読みました。会社の後輩がこの著者の授業を受けたことがあるらしい。  仮想的有能感という言葉を中心に置いて他人を見下すという行為について説明をしています。  この主張については非常に頷けるものでした。社会的にも評価を得ることが難しい中で、潜在意識として防御的に自らを評価する、何者かであるという作用というのは、特に若者にとっては必要なものでもあるように思える。  ... [続きを読む]

受信: 2006.02.28 00:03

» 他人を見下す若者たち [blue]
書店で面白そうな本を見つけた。読み始めるとどんどん中身に吸い込まれていく。 自分を守る術として無意識に働いている自尊感情「仮想的有能感とでも呼ぶべきもの」など、仕事の上でも読んでおきたい本である。私の場合、新人のころは自分の実力に直面させられ、業績を蓄積し..... [続きを読む]

受信: 2006.02.28 00:46

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