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2006.03.16

国家の品格

316208651 国家の品格 藤原正彦 新潮新書 ¥714

 新田次郎の次男にして数学者の著者による話題の書。今月号の文藝春秋の対談だったか、「日本は強い政府、官僚がぐいぐい引っ張っていくことによって発展してきた国家だ。」といった趣旨の発言をしていたように記憶(違いかもしれない)したりしていたので、何回か立ち読みしつつも「買うに値せぬ駄本」として捨て置いていた。

 が、結局買ってしまった。こんなパターンで買ってしまう本が多い私ですが、今回は良かった。講演録に加筆したものらしいが、英国留学者らしくユーモアが頻繁に出てきてイヤミが無いのも好ましく感じた。意外に軽く読めたのも少し不思議。

 少なくとも本書の中では、偏狭な官僚制度を推してはいなかった。しかし戦前のエリート教育への郷愁らしきものや、衆愚政治、ポピュリズムを避け得ないものと決めつけているところは首をかしげた。一方で、三権分立を超えたマスコミの突出した一権(私は自分達こそが国家なり、と考えている検察と、世間のあらゆるところに食い込んだヤクザも別の意味でそれぞれ一権と感じているが。さらにいえば、それらを超えたところに米国(政府そのものえではないが。)の一部の利権屋がスーパー一権として存するとも考える。)であるとの見識は買いたい。

 本書の底流には、グローバリズムという名のアメリカ化という全世界の均一化への反発があるのだと思う。私も無批判なグローバリズムは嫌悪するが、一方でトレンドに乗らないと日本は生きていけないとも感じている。(国民によるものも含めて)統治体制には唯一といったものは無かろうし、経済の体制も同様だと思う。あらゆる組織、体制はいずれ腐敗し、新体制にとって代わられる。振り子は常に振れているのである。もし、これが真理だとすれば、グローバリズムがある程度進んだ場合、ローカリズム、パトリオティズム(ナショナリズムも台頭するでしょうが。)が復権してくると思っています。そういった意味では、グローバリズム、とことん進んでしまえ、とも感じます。別の見方では、その後、アメリカの覇権は崩れ、没落、分裂国家に陥るのではないかとも思います。・・・ちょっと行き過ぎでしょうか。しかしながら、今後、「国家の品格」は対米ならず、対中、対韓、対北、対インドこそがキーになりそうな気もしています。

個人レベルでは、海外に行った際に自国のことをきちんと説明できる大人になることを目指すべきでしょうね。

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コメント

「個人レベルでは、海外に行った際に自国のことをきちんと説明できる大人になることを目指すべきでしょうね」はおっしゃるとおりだと思います。
話は変わりますが以前英検1級勉強法のセミナーに行きました。1級の面接はいくつかのテーマの選択肢から1つを選んで、それに基づいてショートスピーチするというものです。講師の方は出席者に突然こう尋ねました。
「皇室典範の改正についてどう思いますか?」
問われた人はたいがい黙ってしまいました。
「日本語で答えられないことを、英語で答えられるわけがありませんよね。
「日頃から身の回りのことについて、自分はどう思うかちゃんと考えておかないといけないのです」
「一般論がどうかではなく『自分』がどう思うかを、面接試験では意思表示しないといけないのです」

英検対策の枠を越えていい話でした。「自分はどう考えるか」ということを頭の中で揉んでおかないと、「海外に行った際に自国のことをきちんと説明」できないなぁと思いました。

投稿: Mizo | 2006.03.16 21:23

ニュースを見ながら、「何ゆうとんねん。」とか「あほか。何もわかってへんやないか。」と放言してみたり、居酒屋で世相批判をぐだぐだエンドレスで唱えてみたりはするものの、問題意識を持った「自分の意見」となると、とたんに口の中でモゴモゴとなってしまいます。

投稿: 凡太郎 | 2006.03.17 01:23

TB恐縮です。本当におっしゃる通りで、自分の頭で、答えのないものを考える習慣を付けておく必要性を痛感しております。

投稿: VIVA | 2006.03.18 12:20

「問題意識」を持ち続けるためには、文字通り「意識」しておかないといけませんよね。

投稿: 凡太郎 | 2006.03.18 23:53

「流行ものは買うまい」と思いながら、本書も本日買ってしまいました!

投稿: Mizo | 2006.04.17 20:50

今週号のAERAの表紙、著者の藤原さんですよ。

投稿: 凡太郎 | 2006.04.17 23:49

相当話題になっているのでしょう。「国家の品格」はたいがいの書店で平積みで大量に並べられています。
本書で復活を訴えかけられているのは武士道精神、情緒、おもいやりとか、市場主義ではどうでもいいとして葬り去られたものたち。
こういう本が売れるのは興味深いです。グローバリゼーションとか米国中心の秩序とか現状を「やっぱりおかしいんじゃないか?」と思っている人が多いということなんでしょうね。

投稿: Mizo | 2006.04.18 07:12

多くの書店で売り上げTOPを独走中のようですね。
グローバリズム。片方へ振りすぎた振り子は、必ずもとへ戻ろうとするものですから。
また、直球の右というよりも、ちょっと斜に構えたようなような、自虐ネタの多い著者のコミカルな雰囲気もいいですね。

投稿: 凡太郎 | 2006.04.19 00:04

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『国家の品格』が超ベストセラーになりました。日本がおかしくなるという憂国の情を多くの人が共有してる証左でしょう。しかし、あれだけを読むと、藤原氏は何か“言いたい放題”だという印象になってしまうのではないかと危惧します。 もし、氏の著作で、国家の品格だけをお読みになった方には、本書をお薦めします。藤原氏は作家、新田次郎、藤原ていの次男というものすごいサラブレッドですが、本職は小... [続きを読む]

受信: 2006.03.16 17:26

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