南の島のたったひとりの会計士
南の島のたったひとりの会計士 屋宮久光 扶桑社 ¥1,365
著者は奄美大島出身、慶応を出て福岡での大手監査法人勤務を経て、故郷へ戻った。多少の紆余曲折はあったものの、世間一般の目を通してみれば、「なんでまた。」ということになる選択なんでしょう。決して、「仕事に嫌気がさした。」とか「都会生活に向いていない。」という後ろ向きなものではなく、父親の死がきっかけで「島」が呼び戻した、といったように見受けました。島へ戻ろうと決意した著者に対する幼馴染の忠告は「やめとけ」であったそうですが。
前半戦はなかなかエンジンがかからない著者の言動にやきもきしたり、すんでのところで一命をとりとめた列車事故にはらはらさせられたりといった青春記ですが、メインテーマは、やはり島に戻ってから。仕事が無い、仕事への理解が無い、事件の勃発、著者自身の「こころ」に根ざした問題等々、体当たりで島の現実にぶつかっていった様子が、著者が素っ裸になることによって生き生きと(あるいは生々しく)描かれています。
読み終えてみると、一見、およそ仕事として成立しないような場所であっても、知恵と熱意、粘りと、なにより、その場所に対する思い入れ、突き動かされる思いがあれば、道が開けていくことを教えられた気がします。ただし、、言葉であっさりと尽くせるほどに、そんな生易しいものではありませんが。
Amazonの書評にもありましたが、会計士版「Dr.コトー」という表現が言いえて妙だと思います。もっとも、奄美大島の人口は10万人以上だそうで、絶海の孤島をイメージするのは失礼というものでしょう。
ご覧のとおりの魅力的な表紙ですし、文芸調の繊細な表現で読みやすくもありました。
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