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2006.12.10

硫黄島からの手紙

Iwojima1Main21_1  硫黄島からの手紙 (ネタばれ注意)

 昨日、ロードショーの初日に観にいきました。終演後、重いテーマの作品にありがちな空気が流れ、観客はみな無言のまま出口へ向かいました。年配の方が目立つものの、若いカップルも多く奇妙な安堵感を抱く。

 最近のハリウッド映画でよくあるように、企画段階から「父親たちの星条旗」と平行して制作されているものと思っていたが、前作を取り終えてから着手したことを上映後に知った。ギリギリに映画館に入り、パンフレットを帰宅後に読み始めたため。

 一昨年、沖縄に家族旅行で行った折、島の南方の洞窟陣地を見学したことがあったけれど、通路の幅がとても狭く、それでいて総延長はとても長かった。炊事、排泄など、生活はどのようにこなしていたのだろうと想いを巡らしたが、今回の映画でもそういった断面が重要な意味を語るシーンが出てきていた。戦うことと生きること、名誉と屈辱、そして昔も今も日本人の間に流れがちと言われる「場を支配する空気」という魔物。

 栗林中将、バロン西などおなじみの役どころだけでなく、登場人物一人一人に個性的な設定が施されており、米国人が日本人をステレオタイプ化して眺めないように努めているように感じられた。

 子供の頃、米軍の強襲揚陸艦に「IWOJIMA」というのがあることを知って、少なからぬショックを受けたことがあった。おまけに同型艦は「オキナワ」、「ガダルカナル」ときた。これらがベトナム戦に投入されていたことを思うと非常に複雑な心境に陥る。さらに言えば、ピットロードから1/700のウォーターラインのレジンキットが出ているらしい。

 映画に戻って、さすがハリウッドと思わせられるのは、チョコっとしか出ないシーンのセットにも手間とカネを惜しまないところ。日本軍の航空機、日本家屋の町並や九五式軽戦車など。もっとも前者は島と内地のセットは使いまわしだろうが。九五式は足回りや塗装に少し違和感を感じたけれど、映画の本質とは関係なかろう。役者のセリフも、日本兵でありながら「ライフル」など敵性語を語るところなどは、「わかりやすさ」を重視したということだろうか。「父親たちの星条旗」で出てきたカットも使われていたようだけれど、フィルムの風合いがプライベートライアンの様にわざとザラついたものになっていた。洞窟陣地のセットが、ショッカーの秘密基地のような安っぽさを感じさせるところでは、少しばかり興ざめさせられることもあったけれど、全体としては中だるみもなく、2時間半をずうっと緊張してスクリーンに釘付けにさせる迫力と重みがあった。「集団自決」の際の独特の空気感が、とても印象的だった。

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コメント

ようやく本日観ることができました。
「父親たちの星条旗」はまだです。

投稿: Mizo | 2007.01.06 19:56

深刻なテーマにもかかわらず、興業的にも大ヒットのようですね。集団自決シーン、その場当たりで衝動的な空気感、映像、ともに衝撃的でしたね。

投稿: 凡太郎 | 2007.01.06 22:51

伊藤(中村獅童)は結局生き残ったんですよね。
鉄壁の軍人にでも、最後に「生」への執着が頭をもたげた、ということを映画は表現したかったんでしょうか?

投稿: Mizo | 2007.01.07 07:45

パンフで自身も語っていましたが、獅童の役は自己矛盾を孕んでいるだけに、役者として演じるのが難しかったんでしょうね。子供の頃に目にした書籍のタイトルに「玉砕戦の孤島に大義はなかった」というものがありました。この孤島が硫黄島のことを指しているわけではないでしょうが。
イーストウッド監督の真意は図りかねますが、集団としての狂気と死に対して、一人の人間としての理性と生を対比させたかったのかもしれません。
同じ最期でもバロン西の自決シーン、私が知っていた形とは違っていましたが、典型的な「男らしさ」と潔さを感じました。そして、舞台と役者をかえながらも、こういった伝統的な日本人の「自決」は、2ヵ月後の日曜夜の9時台のTVでも同様のシーンが展開されるのでしょう。

投稿: 凡太郎 | 2007.01.07 14:32

あと西郷役がジャニーズの一員と知って、驚きました。立派に役をこなしていたと思います。

投稿: Mizo | 2007.01.07 21:32

二宮クンは天才との呼び声も高いようですね。どことなく、素っとぼけたような、人を喰ったような風貌も味があっていいですね。アニメ映画の「鉄コン筋クリート」でも(声だけでしょうが)主演しているらしいですよ(ローソンの貼り紙より)。

ジャニーズ事務所には、日本中から未来の逸材がひきもきらずに押し寄せてくるんでしょうが、一方で完成されたスタイルの目利きも存在しているのでしょうね。結果として、魅力的な映画(それがハリウッドの手になるものであったとしても)を観ることができるのであれば、それはそれでありがたい話だと感じます。

投稿: 凡太郎 | 2007.01.07 21:53

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