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2008年11月

2008.11.30

責任に時効なし-小説巨額粉飾

512btp1knu9l_bo2204203200_pisitbsti 責任に時効なし-小説巨額粉飾 嶋田賢三郎 アートデイズ ¥1,890

著者は恐らく本当は実名で書きたかったのだろう。巻末に次のような記述が見られる。

「この物語は、著者が当事者として体験した一企業の粉飾事件とその後の企業崩壊に取材したもので、関係者に対する配慮から登場人物や状況設定の一部、並びに団体名等をフィクションとしました。」

著者は2004年に常務取締役兼常務執行役員・財務経理担当としての職を辞すまで㈱カネボウに身を置き、その行われてきた期間の長さ、金額、関係する部署・関係会社等の広がり、そしてその手口のバリエーションにおいて、日本経済史上、空前絶後といっていい粉飾に関わった。その後、カネボウは化粧品部門が花王(書中ではそのロゴマークの連想からか、クレセントという社名で登場。)に引き取られ、残りの事業はクラシエとして再出発することとなったが、同社の30年に渡る粉飾の経緯を眺めれば、粉飾こそがカネボウの組織風土であり、伝統であったと言っても過言ではなかろう。それにしても、この粉飾文化も異様なら、労働組合に経営陣が壟断されている様も、まことに異様であり、いずれの点も内向きの姿勢からこそ生まれてきたのではないか。そして、時効の壁に阻まれるなど、巨悪はここでもよく眠ることとなった。

小説自体は、著者自身が主人公となっており、艶話のサイドストーリーも含めて、いささか格好よすぎるように感じられ、ストーリーに引き込まれてしまう分だけ、余計に「一方の当事者からの記述」であることに気を置きながら読み進める必要を感じた。とはいえ、委員会報告66号の会社区分や、逆さ合併の下りなど、難解になりがちな箇所をくどくならずに平易に書き流してあることに象徴されるように、筆致が巧みなこともあり、非常に読みやすかった。読みやすいということは、読むスピードが速まるということであり、これは結果的に全体像を掴みやすくなることにつながる。

565ページの大作ではあるが、本来はもっと大分なものであったのだろう。泣く泣く削ることとなった箇所も、目にしてみたいものである。そして、平成14年度決算に係る記憶が飛んでいたため、一時的にではあれ、主人公(著者)が非常に厳しい立場に追い詰められることとなるが、この時代、立場の軽重に関わらず、こういったことは誰にでも起こりうる恐れを感じる。日頃から脇が甘くならぬよう、神経質すぎるぐらいでちょうどよいのかもしれない。息苦しい世の中になったものです。

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2008.11.29

リーマン恐慌

51rpfr306hl_sl500_aa240_1 リーマン恐慌 岩崎日出俊 廣済堂出版 ¥1,575

タイトルはキャッチーだし、カバー写真もいかにもといった印象。著者は元リーマン幹部と記されているが、今回の騒動で退職に追い込まれたわけではなく、22年に及ぶ興銀でのキャリアの後、J.P.モルガン、メリルリンチ、リーマン・ブラザースでマネージング・ダイレクターを務めた後、自らコンサル会社を起業したとの由。

ということで、出だしこそ「リーマン・ショック」ではあるけれど、全体構成は最近の動向を踏まえた金融時事の教科書的な色合いが強く、後半に向かえば向かうほど、むしろ地味なほどにとても丁寧にわかりやすく書かれている。Amazonの書評が、そのあたりの印象を物語っているように感じる。

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月刊現代 最終号

月刊現代 最終号

講談社が発行する月刊総合誌が42年の歴史に幕を下ろした。12月1日発売号ということになっているが既に店頭に並んでいる。

定期購読していたわけではなく、気になる記事がある折にたまに購入していただけだが、10年以上前には何ヶ月か続けて読んでいたような気もする。

総合誌は「文藝春秋」と「選択」を10年くらい読み続けているが、こうして「月刊現代」の最終号を読んでみると少々もったいない事態に陥ってしまったことを思い知る。編集方針の違いか、記事のレイアウトが文藝春秋と相当に異なることから、誌面の体裁から受ける印象も軽めではあるが、中味も軽いわけではない。

個人的には「小泉改革」の”りそな事件”の下りが時間の経過もあって却って新鮮に読めたが、立花隆氏を始めとする諸氏のはなむけの言葉のような寄稿に気勢を感じただけに余計痛々しくも感じた。

新書ブーム、これとて終わりの始まりに入ったといわれるが、の陰で長命の雑誌が休刊(事実上の廃刊か)していくことは単に寂しいとか時代の移ろいというだけではなく、ノンフィクション、それも深く突っ込んだもの、に国民が関心を寄せなくなってきたかのようで薄ら寒い思いがする。

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海辺のカフカ(上)

51xs036dbpl_sl500_aa240_1 海辺のカフカ(上) 村上春樹 新潮文庫 ¥740

15歳での家出。まともではないけれど、非現実的ではないテーマで始まった物語が、ちょっとありえない能力をもったナカタさんの登場でオカルト色を帯びていく。田村カフカってハーフ? 

この書名も曲名っていえば、確かにそうなんですな。

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すべての経済はバブルに通じる

31tc2btqw0ul_sl500_aa240_1 すべての経済はバブルに通じる 小幡績 光文社新書 ¥798

以前、立ち読みした折、「まえがき」の奇妙さから棚に戻してしまった経験がありました。ところが、最新号の「週刊ダイヤモンド」で早川英男日銀名古屋支店長が推していたもので、あながちトンデモ本でもない、との認識を新たに購入。

本書の通底には、「専門家、プロなんていうふれこみこそが胡散臭い。」といった考えが流れているように感じる。「権威を疑え。常識を鵜呑みにするな。」といったところでしょうか。

その一方で、著者のプロフィールには、東京大学経済学部主席卒業とか、大蔵省(財務省)入省、退職などとも記されており、アイロニカルなものも感じてしまう。他意は無いのでしょうがね。

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2008.11.26

エリック・パルドン 2008

01021010000161 エリック・パルドン 2008

ヌーヴォーは苦手などと言いながら、結局、買ってしまいました。2004,2006,2007と3回もボジョレー・ヌーヴォー・コンテストで最高金賞を受賞したワインのヌーヴォー。もちろん、ヴィラージュです。

ワイン・オープナーのネジが1つとれてしまい、開栓に大苦戦。ヌーヴォーらしいストレートな味わいですが、結構、苦味があって呑み応えあり。

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2008.11.25

アフターダーク

41t2z9stcgl_sl500_aa240_1 アフターダーク 村上春樹 講談社文庫 ¥540

「国境の南、太陽の西」が1992年であったのに対し、本書は2004年。本書で村上春樹は”新しい小説世界”に向かったことになっているが、少々、実験小説的な印象を受けた。2つ乃至それ以上の”場”の描写が同時並行的に進む。針式時計のイラストがシンクロ性を示す。おまけに三人称で客観視した描写。さらには結論めいたものが示されずに終わる。プツンと切れた、という印象ではないがフェードアウトしてしまったように感じた。

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国境の南、太陽の西

219e4cs2nvl_sl500_aa140_1 国境の南、太陽の西 村上春樹 講談社文庫 ¥540

小学生時代から36,7歳まで。一人称で語るハジメ君。

これまで読んだ村上春樹の小説の中では、もっとも感情移入しやすく、リアリティを感じ、また、切ないながらも心地よさを感じた。

少年時代から現在まで、自身の妄想の部分も含めて、重ねあわせやすい経験を見出したからだろうか。ストーリーの中での”仕事”が占めるウェイトが相対的に高く、ビジネスについても描かれているからか。・・・それとも(あからさまには)誰も死んでいないからだろうか。

続きを読む "国境の南、太陽の西"

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2008.11.24

ノルウェイの森(下)

1169t6g7d7l_sl500_aa140_1 ノルウェイの森(下) 村上春樹 講談社文庫 ¥540

下巻に入って官能的描写がヒートアップ、ボリュームアップ。また、死の頻度も増大。ありがちと言えばありがちだが、性と生、あるいは性を通じた生への問いかけなのか。ただし、死を通した生ではあるが。また、官能的描写と記したけれども、官能的だと感じたのは、レイコさんと教え子との下りだけで、まさに死につながる性ばかりだった。

主人公のワタナベ・トオルの感情が平板であることからくるのか、リアリティが伴わないものの、とことんリアルな描写ばかりが続く。ところが、最後の最後、たったの6行で読者は村上春樹から突き放される。この小説が映画化されるそうで、監督、キャストの配役も気になるところだが、この「最後の6行」がどのように映像化されるかがもっとも気になるところである。

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2008.11.23

「リストランテ・エルベッタ」@「オテル・ド・麻耶」

W011 オテル・ド・麻耶のリストランテ・エルベッタで会食。11月22日、「いい夫婦の日」。摩耶ケーブル、摩耶ロープウェイを乗り継いでの晩秋のいい想い出となりました。W171

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ノルウェイの森(上)

11t6vjezkml_sl500_aa140_1 ノルウェイの森(上) 村上春樹 講談社文庫 ¥540

かつて、村上春樹ブームのブレイクのきっかけとなった作品。こんなナイーブな小説が大ヒットしたということは現代の日本には繊細な人がとても多いんだろうか。それとも、私のようながさつな人種が興味本位で覗き込むケースが多いのだろうか。

「ノルウェイの森」とはビートルズの曲らしい。未聴。

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日本は財政危機ではない!

51plby3ranl_sl500_aa240_1 日本は財政危機ではない! 高橋洋一 講談社 ¥1,785

高橋氏の手になる何弾かめの著書。事実そのものは毎日のように新聞に掲載されていることばかりなんだろうが、その意味するところ、つながり、そして何より日銀マンも含めた官僚の本能的な行動原理の解説はこの方ならでは。

痛快。

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2008.11.16

コロー展@神戸市立博物館

0321 映画鑑賞後、昼食を取り、ルミナリエの準備が進む町並みを眺めながら、コロー展を観に神戸市立博物館へ。ルーブルを始め、国内外のさまざまな美術館から借りてきたコローと、その関係のある、あるいは影響を受けた画家たちの同時代の絵画が一同に。これだけ色んなところから集めたもんだ、と感嘆。どうやら、夏に国立西洋美術館で開催された同展を継いでの開催の模様。どうりで。ずいぶん長命の画家だったようだが、若かりし頃のイタリア行における風景画の鮮やかさと細密さに魅かれる。意外に小さなカンバスに描かれたものが多かった。

左の絵は、ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸、東京の村内美術館蔵。絵葉書を小さなフレームに収めたものを記念に購入。この手のものが少しずつ集まり、わが家の玄関は小さな美術館の風になってきました。

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その土曜日、7時58分

D6eaeb25425565db96ccf1e7d820f315e4b その土曜日、7時58分

神戸シネリーブルにて数年ぶりの夫婦での鑑賞。

原題は、"BEFORE THE  DEVIL KNOWS YOU'RE DEAD"。84歳のシドニー・ルメットがメガホンを取る。最近リメイクされた「12人の怒れる男」や「評決」で有名。

不動産会社の財務担当管理職の、一見、成功者たる兄と離婚した妻から求められる娘の養育費を3ヶ月滞納してしまうほどカネに困っている弟。その二人が企てたのは、実の両親が経営する宝石店への強盗。・・・結局、強盗には失敗し、あらゆる歯車が狂い始める。しかし、もともと多くの歯車は噛み合っていなかったようで。頻繁に繰り返されるカットバックが、最後には収斂していく。

「メロドラマ」が単なる「ソープオペラ」を意味するものではなく、一般には少々古臭いと思われているコンセプトではあるものの、意味深いものであることを、この映画のパンフで初めて知った。

兄役のフィリップ・シーモア・ホフマンが好演というか熱演というか怪演。ただ、あまりにも救いの無い筋書き、結末に、劇場を後にした人たちはわれわれ夫婦を含めて、みな口が重くなったように感じる。

2007年度、ニューヨーク批評家協会賞、ロサンゼルス批評家協会賞、ゴッサム賞、ニューヨーク・オンライン映画批評家協会賞、ボストン映画批評家協会賞、ゴールデン・サテライト賞を受賞。これらを眺めるだけでも玄人受けする映画であることが窺える。

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北人伝説

Apap 北人伝説 マイクル・クライトン ハヤカワ文庫 ¥610

過日、逝去されたクライトン氏の比較的初期の作品。十世紀の東部ヨーロッパのゲルマン人の世界をアラブ人の目を通して描く架空戦闘旅行記。さまざまな意味でクライトンの他の作品とは異なる趣があるが、そこはやっぱりクライトン。虚実を巧みに織り込み、毛むくじゃらの怪物の種明かしを仄めかす仕掛けも忘れない。このあたり、「なるほどなぁ。」と感心させられます。

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面白いほどよくわかる般若心経

5147hmhfa1l_sl500_aa240_1 面白いほどよくわかる般若心経 武田鏡村/松原哲明 日本文芸社 ¥1,470

歳を取ったせいか、こういったものに惹かれることがあります。ふと書店で目にとまったことから購入し、少々時間がかかったものの読了。262文字の大宇宙、いったいいつモノにできることやら。4パターンの読経が収められたCDが付いており、i-Podに移しております。

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第1感

41dpkmfsfkl_sl500_aa240_1 第1感 マルコム・グラッドウェル 光文社 ¥1,575

原題は"Blink"。副題は『「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」。また、オビには勝間和代氏も大推薦!「人間の能力の広がりとその限界を、豊富な実例で教えてくれる一冊。仕事での直感が磨かれると共に、落とし穴も回避できるようになります」とも。

本書では、「適応性無意識」という概念が冒頭で披露されるが、必ずしも「直感」あるいは「直観」で全てを解決、説明できるとするものでもない。15分のビデオ解析、自室の観察、表情の徹底分析など、一見すると相当に限定された情報量でしかないと思われるケースにおいても、とことん要素を分解して解析すれば、驚異の確率で「サキヨミ」ができるといった事例の紹介もある。

  1. 「輪切りの力
  2. 無意識の扉の奥
  3. 見た目の罠
  4. 瞬時の判断力
  5. プロの勘と大衆の反応
  6. 心を読む力

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2008.11.11

1973年のピンボール

217g08qd70l_sl500_aa140_1 1973年のピンボール 村上春樹 講談社文庫 ¥420

1973年といえば、ウルトラマンはタロウであったし、仮面ライダーはV3風見史郎だった。ミラーマンにはジャンボ・フェニックスが登場し、パ・リーグはブレーブスの黄金時代だった。ミリタリーミニチュアでは、ハノマーグやフィールドカー、ツェンダップにマチルダなどがやってきた頃だ。

これにて、いわゆる3部作を読了。

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2008.11.10

羊をめぐる冒険 (下)

21phed8f4el_sl500_aa140_1 羊をめぐる冒険 (下)  村上春樹 講談社文庫 ¥500

上巻を読んだのだから当然のごとく下巻も読みます。こうやって多くの人がハルキ中毒になっていくんだろうか。「村上春樹はクセになる」なんて新書すら出ているくらいですし。

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羊をめぐる冒険 (上)

21tewpqc20l_sl500_aa140_1 羊をめぐる冒険 (上)  村上春樹 講談社文庫 ¥500

ハルキ、続けて読んでしまった。なにやらサスペンス風。

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2008.11.09

樽貯蔵蔵梅酒 江井ヶ嶋酒造

Taru_umesyu1 樽貯蔵蔵梅酒 江井ヶ嶋酒造

明石の地元酒造メーカーの手になるちょっと変わった梅酒。シングルモルト・ウイスキーを自力で作っているだけあって、ウイスキーベースの一言に自信が込められているように感じる。

ロックでちょっと呑んでいい気分になってます。

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ボウモア12年 ミニボトル

321461_2 ボウモア12年

ひさしぶりにシングルモルトのスコッチを買ってきました。円高で少しは安くなるのでしょうかね。

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日本の論点 2009

51zgqmzowwl_sl500_aa240_1 日本の論点 2009  文藝春秋 ¥2,900

年末のお約束。パラパラとめくりながら興味が募った箇所で手を止めるだけでも楽しい。

オビには、「小論文に、面接に。出題率抜群!!」などと。かつての朝日新聞のコピーのようで、こればかりはいただけない。

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追悼 マイクル・クライトン

マイクル・クライトンが亡くなった。66歳で死因は癌であったという。あれだけの稀代の才能が、しかも医学の学位を持った人材が、こんなに早くも失われたことはまことに残念としか言いようがない。

好きな作家などと触れている割には、邦訳未刊の初期の作品はもとより、ハヤカワから出ているものの全てに目を通しているわけではないため、供養の代わりに読み残したものを近々に読んでみたいと思う。”NEXT”が遺作になってしまったんだろうか。

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ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編

51atqzwgtyl_sl500_aa240_1 ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編 村上春樹 新潮文庫 ¥740

3巻中でもっとも分厚い。そして、読み応えを感じた。リアリティのある謎めいた登場人物が出てきたこともあり、スパイ小説風でもあり、山崎豊子の「不毛地帯」ばりの間宮中尉のその後や要領の悪い虐殺のその後など、興味深く楽しめた。もっとも、こういったパーツに魅かれているだけでは、この小説の本質を捉え切れていないってことなんだろうが。

509ページ

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ねじまき鳥クロニクル 第2部 予言する鳥編

51c6067zd0l_sl500_aa240_1 ねじまき鳥クロニクル 第2部 予言する鳥編 村上春樹 新潮文庫 ¥580

第1部より少しだけ分厚く、価格も上がっている。こんな調子でずっと続いていくのか、こういったスタイルの小説が現代日本(に限らず世界全体でも)では人気があるのか、などと少々飽きたような気にもなりながら読み進める。

年代記(クロニクル)といえば、「レイ・ブラッドベリ」の火星年代記も、脈絡が無かったなぁ、などと思い出す。でも、なんであんなに新鮮に感じたのか。中学生という思春期の頃だったので、感受性が鋭かったのか。思春期の頃に読んでおれば、この小説への印象も変わっていたのか、などと思ったりする。

具体的な点を挙げろと言われても、窮するのだが、何とはなしに夏目漱石の長編に似ているような気もしてくる。あらすじに関係なさげに見える挿話がときどき入るためか、一人称が徹底されているためか。また、虚構にリアリティをもたらすために、ホンダ・シビックとかメルセデスベンツ500SELとかポルシェ911、カティサークなんて固有名詞が登場するのか、なんて勘ぐってみる。

村上春樹のいわゆる「地下2階」にいる分身たち。誰がいったい誰なんだ?

361ページ

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ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編

51r8ky977nl_sl500_aa240_1 ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編  村上春樹 新潮文庫 ¥540

3部中の1作。今、語られていることが、現実なのか虚構なのかがよくわからないまま物語が進む。ノモンハンにおける間宮中尉の下りの印象が非情に強く残る。巻末の参考文献の全てがノモンハン関係であった。312ページ。

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グサリとくる一言をはね返す心の護身術

51wknqp3snl_sl500_aa240_1 グサリとくる一言をはね返す心の護身術 バルバラ・ベルクハン ソフトバンク文庫 ¥630

著者はドイツのコミュニケーション・トレーナー。ドイツというのも珍しい気がしたが、当たり前のことながら国籍の如何を問わず、こころに纏わる課題はいつの時代も山積しているのは間違いない。フロイトを生んだ国でもありますし。また、「この世には、コミュニケーション・トレーナーという職種がある。」ということも新鮮だった。

いつものように短時間の立ち読みで手に取り、目次を改め、適当にページを繰って印象を確かめて購入。どの章も示唆に富んでいたが、「非人情のすすめ」は特に印象深かった。

・・・ちょっとしたトラブル、行き違いが日常茶飯事、というよりもそういったことの起きない日なんてまず無いのだが、よくよく振り返ってみれば、少なくともこの数ヶ月間は「グサリとくる」ほどの一言を受けたことがないような気がしてきた。もっとも、ただ忘れているだけのような気もするのだが。むしろ、自分自身がグサリグサリと人を刺しまくって平然としているような気すらしてきた。月夜の夜ばかりじゃありませんしね。

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2008.11.04

ガリレオの苦悩

41wztglccwl_sl500_aa240_1 ガリレオの苦悩 東野圭吾 文藝春秋 ¥1,600

最近出たガリレオシリーズの短編集の方です。内海刑事(ドラマでは柴咲コウが演じています。)も登場。

  • 落下る-おちる:「オール讀物」2006年9月号
  • 操縦る-あやつる:「別冊文藝春秋」第274号
  • 密室る-とじる:「GIALLO」2008年夏号
  • 指標す-しめす:書き下ろし
  • 攪乱す-みだす:「別冊文藝春秋」第276号

以前から漠然と感じていたのだが、人間としての善悪という落差は大きいものの、ガリレオシリーズとトマス・ハリスのハンニバルシリーズの登場人物の役回りの類似性が奇妙なほど見て取れる。物理学者と医学者という違いはありますが、どちらもとことん理性的で、先を読ませませんし。

  • 湯川学-レクター博士:警察関係者ではない学者だが、犯罪の組み立てを的確に推論する。
  • 草薙刑事-グレアム捜査官(FBI):前半での主たる捜査担当者
  • 内海刑事-スターリング捜査官(FBI):後半を引き継ぐ捜査担当者。ともに女性。

果たして、「ハンニバル」のように、湯川先生と内海刑事は恋に落ちるのか。もっとも、小説が生々しすぎたのか、映画ではレクター博士がスターリング捜査官に対して自己犠牲愛を示したに終わりましたが。

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2008.11.03

ブルドッグソース 月島もんじゃ焼シリーズ

Monja1 ブルドッグソース 月島もんじゃ焼シリーズ

本日のわが家の食事。昼食も夕食もこの「もんじゃ焼き」。関西ではほとんど馴染みがないのですが、今日はまさに吐くほど食った。

ブルドッグソースはスティールに食われそうになったけど、はたして米国人たちはこの「もんじゃ」を食ったのだろうか。

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体験、エコバッグづくり

20081103181335朝霧のABC住宅展示場にて。本日の特別企画でエコバッグづくりが催されていました。麻のバッグにステンシルを利用して絵柄を描きこんでいきます。要領よくやれば10分ほどで完成するようですが、わが家はのんびり取り組みました。親子3人の作品は左のとおり。

住宅展示場というと、ちょっと敷居が高いようにも感じますが、行ってみると「夢の空間」だけに、ウキウキ、わくわくしてしまいます。わが家は具体的な移住計画があるわけではないのですが、日頃からこういった”勉強”はしておかないと、いざというときに大慌てってことになりがちなんでしょうね。

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明石城公園 菊花展

20081102160619_2 かつてはコンテスト形式であったかと記憶していますが、今年は○○賞といった類のものは見当たりませんでした。右の写真は、名物の「時打ち太鼓」ロボット前の企画モノ。タコが鯨を釣ってます。20081102160740

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世に棲む日々(四)

51d20cqtffl_sl500_aa240_1 世に棲む日々(四) 司馬遼太郎 文春文庫 ¥580

最終巻となる当巻が、最も痛快だった。本格的な戦闘シーンが現れるのは、この巻だけだからかもしれないが、陸戦、海戦ともに、人を食ったような設定、布陣ながら、会心の勝利となる。27歳で生涯を終えた晋作。あと10年でも生きていたら、近代日本史は大転回していたかもしれない。

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闇金ウシジマくん 12

317bkl7pgol_sl500_aa204_1 闇金ウシジマくん 12  真鍋昌平 ビッグコミックス ¥540

あいかわらず、読後感は最悪。読み終えてこれほどテンションが下がる、暗い気持ちになるコミックも珍しい。でも、弱いという意味ではない人間味をみせてくれる登場人物が出てきたことで、少しばかりの救いを感じた。その後で、救いようのない地獄が待ち受けているにせよ。

11巻を読み飛ばしてしまったようだが、アマゾンの書評を眺めたところ、11巻は他の巻に比べても一段とエゲツナイらしい。

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2008.11.02

いま、庭に咲いている秋の花

20081102133910 日頃はまるで気にかけていないのですが、わが家に咲いている花です。

夜になると一斉にしぼんでしまいます。それが朝には満開に。ちなみに名前は知りません。

ほかには、こんなのとか、あんなのとか。ほかにも何種類か咲いていました。またもや、ちなみに全て名前を知りません。ここまで花の名前を知らないオトナであったとは情けない。2008110213392620081102133948

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世に棲む日々(三)

41d9zxpnkvl_sl500_aa240_1 世に棲む日々(三) 司馬遼太郎 文春文庫 ¥580

ずいぶんと二巻とのインターバルが空いてしまった。

松陰亡きあと、晋作が主人公となって物語は展開するが、ときに井上聞多(後に馨)や伊藤俊輔(のちに博文)がリレーを引き受けたりしながら、複雑かつ狂気、そして純粋さと権謀術数が交錯する中、政局と思想がお互いに理解できあえぬまま対峙する。それにしても、そのスケール感や奔放さでは龍馬を凌ぐとさえ感じられる晋作が、それほどに認知されていないのはなぜ故か。

三連休(もっとも昨日の午前中は、学園祭の中でありながら講義がありましたが。)の中日。好天の下、屋内で読書というのもどうかと思うが。

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読書進化論

41nc9nn4awl_sl500_bo2204203200_pisi 読書進化論 勝間和代 小学館101新書 ¥777

新書ブームの殿とか最後を飾る、とか噂されている小学館101新書の第1弾のうちの1冊。読み始めてすぐに、「つくづく著者は読書が大好きなんだなぁ。」と感じ、「書籍愛」のようなものの印象を受ける。一方、後半は、書籍を売るためのマーケティングが語られ、ネット時代の読書、書籍のありかたを出版、書籍流通業界の現状に即して、あるいは自身の体験をテストベッドにして将来への布石を示す。

アマゾンの書評でも、必ずしもいわゆるカツマーの人ばかりでないためか、賛否両論ですが、「本をとことん読むなら、本を書かなきゃ。書く以上は、売る努力(ここでは考える努力のウェイトがかかるわけですが。)をキチンとしなきゃ。」というメッセージは新鮮でした。

確かに、本と競合するメディアの代表格であるネット上のブログも、読者の多くが書き手でもあるわけで、「人様のものを読む以上は、オノレもなんか書けよ。書いて初めて、”読む”ことに深みが生まれ、完成されるんだろう。」と著者が語りかけている(こんな下品な表現ではないけれど。)ようにも感じました。これも、下記の「思考レベル」や「行動」の重要性を踏まえた一貫したスタイルなんでしょうか。

  • 思考レベルの6段階「知識、理解、応用、分析、統合、評価」
  • 「やったかやらないかの差だから」・・・行動がいかに重要か、という意味あいのコメント。
  • 中高生時代の愛読書に、筒井康隆、星新一、半村良なんて名前が挙げられた点に大いに親近感。

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2008.11.01

DIME 2008/10/7

24051101081 DIME 2008/10/7 小学館 ¥500

付録の「MicroSD/SDカードリーダー」につられて購入。平積みされていたので、てっきり最新号だと思っていたんですが、2号前のものでした。昨日、車中で読み終えたものの、ついさっきネットで検索するまで気がつかなかった。普段は¥350のところ、今号は¥500になっているようですがずいぶん得した気分。たまには、こういったカタログ系(モノ、グッズ系?)も、見知らぬ世界へ誘ってくれるようで楽しい。

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ちょっとデザインを変えてみました。

ご覧のとおり、既存のテンプレートのひとつに気に入ったものがあったので変えてみました。この変更に深い意味はありません。ちょっとした気分転換です。ときどき試してみようか、なんて考えているところです。知らないうちにココログにも沢山のテンプレートが用意されるようになっていたんですね。

ちなみに「水中写真/群舞」ってタイトルだそうです。

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