ヒトラーの経済政策
ヒトラーの経済政策 武田知弘 祥伝社新書 ¥819
副題は「世界恐慌からの奇跡的な復興」。近代における絶対悪の最右翼として語られることの多いヒトラー。殊にヨーロッパにおいては口にすることさえ憚られる局面が未だにあると聞く。しかし、彼が一時的にせよドイツ国民の圧倒的な支持を得たことも事実。何ごとにも光と影があることを踏まえ、絶対悪にも学ぶ点は多いと説く。
ヒトラーを軸に政権前期の経済・財政の要であるシャハトとシュペーアの経済・財政政策を中心に当時の世界経済を俯瞰する。ページを追うごとにその活写の様は躍動感を増す。このところ関係書を読んだ毛沢東と比しても、経済に関してはそのブレーンは数段格上であると感じる。また、女性関係、金銭関係など身辺の潔癖度も、ヒトラーの方が清廉であったようだ。しかしながら権力闘争は、いずれも気分が悪くなるほどの酷薄さであることはいわずもがな。
人口石油の話は聞いたことはあったが、ソ連の油田を襲うまで、ドイツ軍の液体化石燃料の殆どをそれで賄っていたとは初聞。
<Amazonより>
第一次世界大戦で国力を使い果たした上に、多額の賠償金を課せられたドイツ。ようやく復興しようとした矢先に世界大恐慌に襲われ、国はボロボロの状態になっていた。しかし、ヒトラーが政権を取るや否や、経済は見る間に回復し、2年後には先進国のどこよりも早く失業問題を解消したのである。
ヒトラーの政策は失業問題にとどまらない。労働者には有給休暇、健康診断、福利厚生が導入され、郊外住宅も用意した。食の安全やアスベスト対策など国民の健康にも目を配り、世界で初めて「禁煙」を掲げたのはナチス・ドイツである。大規模店舗法を定め、公務員の天下りも禁止した。これらの政策はいまも現役であることに驚く。現在の日本が見習うこと大である。
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