共同幻想論
共同幻想論 吉本隆明 角川文庫ソフィア ¥620
ばななさんのお父さまによる往年の名著。序を含め「憑人論」など12の各論で構成される。通底するスタンスがあることから、小説で言えばオムニバス、連作といった趣でしょうか。
著者は東工大卒の詩人としてスタートし、文芸評論、思想家として活動を展開していきました。あくまで「学問の外」から評論を展開し、また当時の若者の支持を得たことから、個々の学問体系、作法を所与のものと認識していた既存のアカデミズム関係者は、衝撃を受け、あるいは混乱し、そもそも議論が嚙み合わないまま社会現象となってしまったように感じます。
いま、こうして読んでみると、凄まじい「刻苦勉励」に支えられた幅広い知識と、独自の洞察、考察は刺激的ですなのですが、少々決めつけが多く、飛躍と感じられる箇所が目立つように思います。こういったところが、かつての既得権者たる学者連を苛つかせたのでしょうか。おっと、私もすでに体制側の視点になってますね。
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